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第33回 「ぼーっ」とするから「ぼう然」? | 漢字の現在(笹原 宏之) | 三省堂 ことばのコラム

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彼は「すごく」というような意味でふだんよく使っているのだが、ある時、本当の意味とは違っていると感じたのだという。「俄然」という漢字を知らない、あるいは知っていても「俄然」の「俄」の字に「にわか(に)」という意味や訓読みがあることまでは習得していない。そのために、使用される文脈と語の発音とが醸し出すイメージに基づいて生じた用法のようだ。「ガッと飛びつく」の「ガッと」というオノマトペのような副詞の働きをする語との関連も考えられる。 「…然」という副詞、連体詞のたぐいの語は、何かと話題になる(*1)。ここでは、話題にのぼりにくいものも扱いながら、少し見ていこう。 「きぜん」という語も、「キッ」とするという語のイメージと結びつきやすいようだ。学生たちに、単語を仮名で示し、漢字とその意味とを尋ねてみた。すると、「きぜん」とは「きっちりとした」「きっぱりとした」「ビシッキリッとした」という意味だとの意識を記す者がいた。漢字は、「毅」と書こうとして誤字体になるもの、同音字など全く別の字で書く者もいる。少なくとも別の字で書く人たちは、漢字の意味(字義)と漢語の意味(語義)とが、うまく結びつけられていなかったようだ。 また、「あぜん」を「呆然」と書く学生もいた。「呆れて何もいえないこと」だという。そして、「ぼう然」に対しては「ボーッとしてしまうこと」という。惜しいことに一つズレてしまい、「ぼう」と「ボー」との音のつながりが生じていたようだ。この「あぜん」には、「啞然」のほか「阿然」などの異表記も現れ、「あっけにとられる様子」、「あきれること」と、ここにも、「ア」という発音との関係づけがうかがえた。「ア然」で「口をあんぐりあけて驚いている」という回答もまた同様であろうか。 「呆然」と「茫然」を想定した「ぼうぜん」だったが、「棒然」で「棒のように立ちすくしている」(「立ちつくしている」の意であろう)という解釈もあり、また、「ぼうぜん」で「ボーッと立っているさま」、さらに「呆然」のほか「模然」で「ぼーっとする」ともいう。やはり発音から語義を理解しようとしている。 「ぶぜん」に対しては、「むすっとする様子」という回答もあり、その前頃に行われた世論調査に関する報道による影響は薄いようだった(*2)。中には「仏然」と書いて「ブスっとした態度をとること」と、仏頂面と絡めたような解釈も記されている。

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